人文学は実学だからこそ支配はそれを忌み嫌う
2016年11月17日
2021年5月13日
2016/11/17
東京新聞 2016/11/17 夕刊
歴史への冒険 考古学の今 人文学の価値 知を生成する実学
国立歴史民俗博物館教授 松木 武彦(まつぎ・たけひこ)
実に簡潔に人文学の意味を語っている。我々がどのようにして我々として現在成立し、それはどこへ行かなくてはならないか、それを考える思考だからこそ、それに対して、現在の枠組み内で自らの「利益」を追求するのが主体である者(思考)は、そのような、自らの存続を脅かす人文学の力を排斥し、現在の枠組みを反復し強化多様化してくれる思考だけを促成しようとするのだ。
歴史への冒険 考古学の今 人文学の価値 知を生成する実学
国立歴史民俗博物館教授 松木 武彦(まつぎ・たけひこ)
・・・・国語の教師だった父親にまで「飯が食えなくなるぞ」と忠告されながら大学の文学部に進んだ私は、日本史を専攻した。趣味の世界だろうと高をくくっていた私を待っていたのは、過去を明らかにすることで現代社会のさまざまな問題を解決していこうと実践する先生や先輩たちの姿だった。集団どうしが抑圧し合い、国どうしが我利を求めて戦争をくり返し、人々の精神もまたそれに没入させられていた過去から民主主義や国際平和のしくみが工夫され、多くの国がそれに沿った行動や発言を一応は見せなければならなくなっている現代へ。この歩みがどのようにして実現され、課題として何が残っているのかを具体的に明らかにする巨大な実学として、歴史学が息づいているようすを見た。・・・・
実に簡潔に人文学の意味を語っている。我々がどのようにして我々として現在成立し、それはどこへ行かなくてはならないか、それを考える思考だからこそ、それに対して、現在の枠組み内で自らの「利益」を追求するのが主体である者(思考)は、そのような、自らの存続を脅かす人文学の力を排斥し、現在の枠組みを反復し強化多様化してくれる思考だけを促成しようとするのだ。
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