討議を重視するキューバ型民主主義
2019年11月18日
2021年5月13日
「アジア記者クラブ通信」 321 2019年10月号
・7月定例会リポート(2019年7月24日)
外交大国キューパと米国の経済封鎖苦
外交官が語る直緩民主制への挑戦
クラウディオ・モンソン
(駐日キユーバ大使館政務担当書記官)
P7以降
・討議を重視するキューバ型民主主義
よく「キューバは独裁主義。民主主義ではないJ という風に外国の報道は偏見を持って情報を涜すのですけれど、我々から見たら、そういう感覚はまったくない。普通のキューバの国民からしたら、我々は独裁主義だと考えたことはない。
もちろん我々のシステムはアメリカのシステムとは全然違いますし、民主主義のいろいろな党があって、選挙があって、それだけが民主主義だという風には考えておりません。
キューバはアメリカのすぐそばで、アメリカの意地悪、圧力をずっと受けて、生き延びるためには、政府はやはり国民の賛成がないとまったく何もできない。キューバの政治システムの詳しい説明はしませんけれど、それだけは考えていただきたい。下手に動いたら、ただでさえ米国がお金を出して、反対政派がないところに無摺やり反対政派を作ろうとしているわけですから、本当にキューバ政府はポピュラーじゃないと、国民の意見に配慮しないと続くわけがありません。
だから、他の国では、支持率が低いとか、あまり選挙に人が参加しないとか、そういうことはよくありますけれど、キューパの場合、こういう政治的参加というのは結構当たり前なのです。
このような討議がどう行われたのかをビデオで見ていただきたい。これは経済研究所の討議の様子です。キューバは16 歳から選挙権があり、16 歳以上はみんな憲法の草案を持って、自分たちの周りで勉強して意見を出す。これはもちろん学校でも職場でも行われ、仕事をしていない人は自分たちの地域で町会みたいなものがあるのですけれど、そこで集まって意見を出し合う。これは「経済研究所」と書いてありますけれど、こういう場所だけではない。こういう人たちはもちろん政治的な意見を持っているのが当たり前ですけれど、それだけではない。こちらに映っているのは農業に関わる会社です。豚肉を作っている場所です。こういう場所でも人々は普通に意見を出し合い、どこでも自分たちの意見を出し合って最終的に作られるのが憲法なのです。先ほど説明しました現代化の方針というのは、すべて国民と話し合ってから決められたものです。勝手に一方的に政府カt作ったものではなく、政府が作ったものを国民に持って行き、その結集かえって来たものを直して作られたものが法律になります。
※憲法改正の国民議論により変更された部分として紹介した事項。
■基本的サービスは無料⇒整形手術を含む医療費無料維持。
■教育はすべてタダ。を維持。
「大学までをタダにして、大学の後は会社や職場にお金を出してもらう、それで大学の負担を少し減らそうと、そういう考えがありました。でも結局、草案が国民討議に出された時に国民は「今まで通り、すべてタダでなければならないJ と。つまり、僕がたとえば趣味として数学を勉強する、外交官ですから数学を勉強してもどうしようもないのですけれど、趣味で勉強したいのであれば、それもタダという風になるわけです。」
■同性婚を認める。表現変更。
「「結婚は二人の人間の結合」という風に書かれていました。これはなぜかというと、もともとは「女性と男性」 と書かれていたのが、今回は「二人の人間」 に。つまり、これは同性婚を認めるということにつながる。」
「だからものすごい議論になった。結局は書き直されたのですが、「人間」の代わりに配偶者」が使われるよう になり ま した。 スペイン語で「配偶者」 は 「 cónyuge」 なのですけれど、それは性別されない。男でも女でも同じ「配偶者」 ですから、 結局は、 この書き方でも同性婚は可能になる。これについても、キューバのテレビのビデオを見てください。」
「もう一つ大事なのが、今まではなかった「ハイビアス・コ-バス」 =不当な拘束を避ける手続きが法律として加わる。政府の機構もいろいろ変更されるのですが、今まで「議長」だったのが「共和国大統領」「首相」に分かれる。大統領は2 期まで、1 期目は60歳未満でなければいけないということが新しく決まります。2 月24 日に国民投票が行われ国民の90. 15%が投票しました。その中の86%以上~ほとんど87%~が支持する。そして4 月19 日、新憲法が施行された。」
「いろいろな党があって、その党がキャンペーン、選挙運動にたくさんのお金をかけて自分をアピールし、それでできた政権は、投票した国民の51%でも何%でも、多数の意見を大事にする政治につながるとは思いません。」
「【会場】新憲法における結社の権利に、複数政党制は含まれるのか。
【モンソン】含まれません。それは、政治的な変革はほとんどありません。この現代化プロセスはほとんど経済、社会的なものであります。今までなかった大統領、首相のポストはできて任期も決まるのですが、複数の政党は我々にとって民主主義につながっているとはまったく思いません。未来、ほかの国がどうあるべきかは別な話ですけれど、今のキューパは国際的な立場や経済的な事情、国の歴史からして、それは役に立たないと思っています」
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